健康コラム
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人の体温はどうして37℃なの?
2023.05.10 奴久妻 智代子
私たち人をはじめとする哺乳類や鳥類などの恒温動物は、内温動物とも呼ばれ、代謝によって自らエネルギー(ATP:アデノシン三リン酸)を作り出し、熱として利用することで、体内の温度をそれぞれの動物種によって一定の温度帯に保っています。人の深部体温は37±0.5℃の狭い温度域に維持されています。
体の中では24時間、化学反応が起きていますが、化学反応を円滑に進めるのは酵素です。酵素は限られた温度域、pH域でしか反応せず、その範囲内であれば、アレニウスの法則に基づいて体温が高くなればなるほど化学反応はより活発になります。
一方で深部体温が42℃を超えると化学反応に不可逆的な反応が起こってしまい、細胞の中のタンパク質が致命的な障害を受けるといわれています。実際に温度とリンパ球の攻撃力の関係をみますと、35℃より37℃、さらに39℃でより攻撃力は上がってきますが、41℃を超えると逆に下がってしまいます。高体温を保つためにはとても多くのエネルギーを作り続けなければならず、リンパ球も疲弊してしまうのです。
それならいっそ、もっと体温を低く設定してエネルギー消費を抑え、細く長く静かに生き永らえるのも一計かと思うかもしれませんが、上記のリンパ球の攻撃力に示されたように、体温が低下すればするほど免疫細胞の働きが弱まり、体内で病原微生物や異常細胞が増えやすくなるという側面もあります。
37℃というのは、人の生命活動にとって、エネルギーの産生と消費のバランスを維持した上で、微生物の増殖やがんの進行から身を守り、体内の様々な化学反応を円滑に進める最適な温度域であるといえます。
ちなみに、外気温の変化に応じて体温が変化する動物は変温動物、または外温動物と呼ばれ、爬虫類や両生類、魚類のような脊椎動物の他、すべての無脊椎動物がこれに含まれます。爬虫類のような変温動物では、自ら生み出す熱エネルギーの量が限られるため通常低体温ですが、体温が低いと活動能力が下がってスローな状態になり、動く餌を獲ったり素早く敵から逃げたりすることができなくなってしまいます。そこで、ここぞという時には太陽の光を浴びてエネルギーを充電し、体温を37℃前後まで上げて運動エネルギーを確保します。
活動時に体温を上げるのは、人も同じです。人の深部体温は37±0.5℃の範囲の中で、朝から日中にかけての活動期には上昇し、夜から明け方にかけての休息期には下降する24時間の概日リズムを刻んでいます。日中の深部体温が低いと、体の動き、臓器の動き、そして細胞の動きが鈍るため、会社に行っても仕事にならない、ご飯を食べても消化吸収できない、ストレスに抵抗できない、といったことに繋がってしまいます。逆に夜間の深部体温が高いと眠りが浅くなり、休息できないまま疲れが残る朝を迎えることになってしまいます。
深部体温を保つためだけでなく、本来の概日リズムを作るためにも、1日1回の重炭酸温活を習慣にしましょう。